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■我が息子は

渡辺由美子(元会員)

 平成元年12月1日我が息子は、東京にあるT病院で生を受けました。出生時羊水を大量に飲んだため両肺に水が貯まり片肺はパンクし、仮死の状態で生まれました。「この2、3日が峠です」と言われ、黄疸も強かったのですが、保育器の中で何とか命は取り留めました。その後、ミルクを飲ませると嘔吐を繰り返すため、腸の検査を行いました。その結果、腸回転異常症であることが分かり、K大学病院に移り、生後21日目の小さい体にメスが入りました。入院は18日ほどで済み、「その後は順調に育つ」と思っていた私たちが、「何かおかしい」と思い始めたのは、3カ月検診のころでした。ミルクをよく吐くようになり、体重が増えず、月1度は保健所と生まれたT病院に通うようになりました。保健所に行く度に「ミルクの量が足りない」と今にも死ぬかのように言われ、どうしたらいいのか分からず、私は1日中泣いていました。その頃は、首も座らず、T病院からの紹介で国立身障者センターへ行き「味覚が発達しているかもしれないから離乳食を始めましょう」といわれ、そして「今後は、都立の医療センターで発育・摂食・栄養・リハビリ・心理と総合的に診てもらいましょう」と紹介され、通い始めました。

 しかし、体力がなくリハビリに行けば、家に帰って昼食も取らず寝てしまうことが続き、数か月後には通うことをやめてしまいました。「ミルクを飲ませるより離乳食を」と進めていくうちに牛乳を飲むようになり、良い兆候だと思っていました。しかしペースト状のものを食べ、牛乳を飲むと吐きやすくなりました。食べた物を全部吐き出してしまうことが多く、回数も頻繁で体力の消耗もかなりのものでした。“水分+固形物”を同時に食べさせるとむせたり、ゲップが出にくい体質なのか、何らかのきっかけで吐く状態でした。食事をとればその度に取った物を全部吐くことも少なくありませんでした。私も1日に何回も吐かれ、ストレスが貯まり「何で吐くの」「もう何も食べさせないから」と口から言葉が出てしまいました。汚れた服を着替えさせるにも物でも扱うように乱暴に扱い、ポイと放るように子どもを寝かせ、お風呂場で汚れた物を洗いながら情けないやら、悲しいやら…。自分自身も水を浴びながら洗濯をする日々でした。今考えれば「幼児虐待」ですよね。

 我が息子は、物を呑み込むことはできましたが、かみ砕く力はなく、また胃で消化できずに吐いていたのだと思います。それに気がついたのは、10時に食べやすいと思ったプリンをスプーンにすくって1個食べさせ、12時に当時唯一の栄養源であったドリアを食べさせ、3時に牛乳を飲ませた後吐き、吐き出した内容物を見てみると、「どうして“プリン”が?そうかこの子は噛む力があまりなくて、呑み込んでしまい形が大きければ消化しにくいのだ」と解るようになりました。それが1歳半ぐらいの頃だったと思います。その頃の私は、「この子は、食事さえちゃんと取れれば普通の子どもたちのように育っていってくれるんだ」と思っていました。

 3歳頃までに少しずつ吐く回数も減っていきました。しかし、もっと早く“食事の形態や水分の与え方”を我が子に合った適切な方法で“摂食指導”が集中的に行われていたら、リハビリにも通え、今よりももっと全体的に知能や機能面で発達していただろうと思います。過日何年かぶりに東京都立療育センターへ行って来ました。当時の院長先生とは替わられていましたが、現在の院長先生とお話をした折に院長先生がこの子を見て「どうして歩けないの?麻痺もないのに。染色体異常の子どもでもしっかり歩けるようになっているのよ」と言われました。その時「やはり食事の面での遅れが響いてしまったな」と強く感じました。この子は、生後10カ月頃から痙攣発作がはじまり、今では身体障害者手帳と療育手帳の交付を受けています。

 顎を使うということは、脳にたくさんの刺激を与えてくれると聞きます。2歳7カ月まで東京に住んでいましたが適切な情報がなく、摂食に関しては自己流で手探りでの状態で進めてきました。早い段階で摂食に関する適切な指導が行われていればこの子も辛い日々を何年も引きずらなくてもよかったと感じる今日このごろです。今6歳7カ月のこの子は、やっと普通の物が食べられるようになりました。でも硬いもの(煎餅やりんご等)、肉などを噛み切る力はまだありません。スプーンを握り乗せてもらった物を口に運び、好きな物は次から次ぎへ食べ、嫌いな物は口を開けず頑として食べないこの子を見ていると、今後この子が硬い物でも上手に食べられるようになるのかと不安に駆られることがしばしばです。

 栄養チューブをしていたお子さんに比べると我が子は最初の段階で軽く思われました。当時適切な指導がなされていればと今は悔やみます。個々の発達や発育状況に応じた適切な摂食指導を受けることは、単に栄養補給のみならず子どものその後の成長に及ぼす影響は大変大きな物があると思います。早期に適切な摂食指導を受けることの重要性と必要性を一層切実に感じています。また、障害を持つ子どもや親たちの交流の場や情報交換の場があれば大変心強いと思うと共に、社会全体が特殊なこととして受けとめるのではなく、自然に受け止めてくれることを切に希望するものです。


<障害の概要>

平成元年12月1日生まれ  

出生から1ヶ月以内
 ・出生時の異常 
 ・新生児仮死 
 ・羊水大量吸引症候群、気胸 
 ・その後の経過中の異常 
 ・胆汁性嘔吐 
 ・腸回転異常症(生後22日目K大学病院にて手術実施)

その後 
 ・染色体検査実施(10ヶ月後) 
 ・異常ありの判定 
 ・痙攣発作が始まる(生後10ヶ月後現在も通院加療中)
 ・てんかんと診断される(2歳9ヶ月) 
 ・脳性麻痺と診断される(2歳10ヶ月) 
 ・療育手帳の交付を受ける 知的障害(重度)(2歳11ヶ月) 
 ・身体障害者手帳の交付を受ける 移動機能障害(1級)(3歳8ヶ月)
 ・療育手帳の再交付を受ける 知的障害(最重度)(5歳1ヶ月)

          

<トピックス>
・我が息子は(現在表示中のページ)
・栄養チューブをはずすまで


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